あっという間の慈悲心

春から家の前の県の所有地を、フットサルの球技場にする大工事が始まりました。家の
前には、幅3メートルくらいの狭い道が通っていて、道の向こうはすぐ敷地ですから、一時
期は重機の騒音に悩まされました。
そこは昔、カイコの試験場があったところで、敷地内の桑畑だった広大な土地は春から夏
は雑草で埋まり、たくさんの昆虫たちの住みかでした。
ところが、この大工事でそこにいた昆虫たちが住宅の方に逃げて来たらしく、今年は庭の
植物がたくさん食べられました。そこに夏のアメシロの大発生が重なり、高い木も下の植
物も大変な騒ぎでした。
今年初めてバジルを種から育てました。いろいろな料理に幅広く使えるので、大きくなる
のを楽しみにしていました。ところが、葉が育つはじから虫に食われます。とうとう虫食い
のない葉を取ることはできませんでした。葉の表と裏や茎までを見るのですが、虫はいま
せん。友達は、犯人はナメクジではないかと言いました。確かにナメクジが通った跡の白
い線があちこちにありましたから、いるだろうけれど庭中を探すわけにもいきません。ナメ
クジは夜7時頃から活動しはじめると言われみても、見張っているわけにもいきません。
台所で虫食いの葉を、洗いながら、まあしょうがないか、虫も生きていかなければいけな
いし、共存共存と慈悲心をもって諦めることにしました。
ところがところが、その慈しむ心は3日で消えました。
すばらしい名案がヒラメキました。来年はプランターで育てよう。勝手口の内なら陽も当た
るし、スライドすれば網戸になるから、外からの風も通るし、何より虫が入れない。プラン
ターはそこに置こう。使いたい時もわざわざ庭に取りに行かなくてすむ。虫は濡れた葉は
食べないというから、水をあげる時は外に出して、しばらくして葉が乾いたら内に入れれ
ばいい。そうすれば終始虫から逃れられる。よし来年は虫食いのない葉を収穫できそうだ。
慈悲心はあっけなく消えました。というよりはもともと無かったわけで、たとえ葉っぱ一枚
でも、食べ物の恨みは恐ろしい。葉っぱは、執着を映す、でした。