民放のテレビでお正月と7月の年二回だけの、いつも楽しみにしている番組があります。
「はじめてのおつかい」という、三才から四才位の子供たちが初めてお使いをする様子を追った
番組です。お使いは一人で行く場合も、兄弟の場合も、友達同士の場合もいろいろです。
こんなお使いもありました。
買うものはお肉です。お肉屋さんとは家同士親しい間柄。田舎から届いたさつまいもをついでに
持って行って、とお母さんに頼まれました。
お肉屋さんに着きました。お店のおじさんの聞き上手もあってお肉の注文はできました。次は
さつまいもです。さつまいもの入ったスーパーの袋を「あげる」と言っておじさんに渡しました。
おじさんは袋の中を見て「あげる?」と聞きました。その子は又「あげる」と言いました。おじさん
は「ちょっと待っててね」と言って、お店の角間に行きました。
ここから予想もつかない展開が始まりました。
角間には調理台と業務用のフライヤーがありました。このお肉屋さんは買ったお肉をお店で
揚げてくれるのだそうです。
おじさん違うんです、という私の気持ちをよそに、おじさんは慣れた手つきでさつまいもを切って
揚げ始めました。
おじさんは「(差し)あげる」を「揚げる」の意味にとってしまったのです。
まさに自我の世界、世界は自分を映す、に苦笑い。楽しい苦笑いでしたが。
思うにお店が花屋とか薬屋とか「揚げる」に関係のないお店でしたら、さつまいもは本来の意味
通り間違いなく相手に届いたのでは。また、このお肉屋さんが買ったお肉をその場で揚げてくれる
サービスをしていなかったら、こういう展開にはならなかったでしょう。偶然って面白いものです。
子供たちが家を出てから帰って来るまでの道中は、どのお使いもハラハラドキドキの連続です。
三年か四年間の自分の体験のすべてと知識を使って達せようとする姿は愛おしく、その行動が
大人から見てどんなに不合理であっても、その子にとってはありったけのもの、頑張りが伝わっ
てきました。子供たちの一つ一つの言動は、できたできない、良し悪しに関係なく、どんなもの
であれ純粋で心が洗われました。
スタジオも感動と笑いと涙でいっぱいでした。