和み

家の近くに八百屋さんがあります。
今は必要な食材はすべてスーパーで間に合う時代、個人でやっている八百屋さんは少なく
なりました。
八百屋さんは、家の行き帰りに横断する道路のわきにあります。車の切れるのを待つ間、
店先で売られている花に目がいきました。バケツいっぱいの色とりどりの花がきれいです。
花にチョウが飛んでいました。名前は知りませんが、よく見かけるチョウです。羽は
モンシロチョウのように真っ白ではありませんが白く、羽に薄い模様があります。
八百屋さんの花にチョウとは意外でした。確かに自然が少なくなりました。花を求めて
八百屋さんの花にたどり着いたのか、そう考えるとかわいそうに思えてきます。それに
してもここは車は行き交うし、コンクリートばかりの一角、ここに花があることがよく
分かったものです。よほど好きな香りがする花があるのだろうか。
チョウは花に止まることもせず、ただただ花の上を行ったり来たり飛んでいます。二匹が
ぶつかりそうでぶつからず、離れそうで離れず、微妙な距離感で飛んでいます。ふざけ
あっているような、じやれあっているような、楽しそうです。野の花でなくとも花があることが
うれしいのか、二匹でいることがうれしいのか、小刻みにゆらゆら飛ぶしぐさが愛らしい。
小さな一景色だけれど美しい。眺めていると自然に笑みがこぼれます。心が和みます。
たった数分目にした光景で、自分の気持ちが随分ゆるんでいることに気づきます。
植物は自我が無い、だから人は癒される、と教わりました。チョウも自我はないのだろうか。